「この恋と、その未来。」最終巻発売に対して思うこと 何故ファミ通文庫及び角川が最終巻発売を決断に至ったのか?
お久しぶりです東雲信者です。
先日もお伝えいたしましたが、この度「この恋と、その未来。」最終巻が発売が決まりました。
打ち切りが決まった作品がこのように奇跡的に最終巻を刊行できるというのは、非常に稀有なケースであると思います。
まずはこのことを喜びたいと思います。
さて、本日の本題は今回奇跡的に最終巻を刊行に至った「この恋と、その未来。」という作品に対して
「何故打ち切られた本作品が最終巻を刊行できたのか?」
つまるところ
「なんでファミ通文庫並びに大本たる角川が重い腰を上げたのか?」
というのについて考察したいと思います。
単純に「最終巻出るよ!やったね!」と喜びたいのは山々なんですが、どうもこの騒動には裏があると個人的に思っております。
過去記事でも触れましたが、通常は
「打ち切られた作品は続きを出すことは困難である」
が世の常であります。
当然ながら、出版業界も慈善事業ではないので利益に見合わないという判断が下った作品が過去にどれだけ多くあったかは星の数ほどあると言えます。
その逆に打ち切りから奇跡的に復活した作品は本当に極々稀なことであるのは言うまでもないということです。
前置きが長くなりましたが、私が言いたいことは次の一言です。
「ファミ通文庫、それを経営する角川が今回の決断を下したのには読者の声以外に大きな理由がある」
これが私の考えた結論です。
何故私が、この結論に至ったのかというと
ファミ通文庫公式ブログ様より
10月は嬉野秋彦最新作『魔術師たちの就職戦線』登場! そして11月にはあの作品の完結巻が……! | FBにゅーぶろ|話題のラノベ情報が見つかる!
と、9/23配信の10号「刊行予定」に先駆けてここで発表。
『この恋と、その未来。』
最終巻となる6冊目、11月に発売します。
四郎と未来、ふたりの結末はファミ通文庫からしっかりお届けしますので、こちらも楽しみにお待ちください。
この一文の中で最も注目すべきは
「ファミ通文庫からしっかりお届けします」
ここです。
この一文から考察できるのは
1.先日5月30日発売「この恋と、その未来。 -二年目 秋冬-」での森橋ビンゴ先生のあとがきにおいて、出版は厳しいから何かしら別の手段で刊行するという発言に対しての公式からの回答
という捉え方もできます。
しかし、今回の騒動は比較的大事になっております。
少なくともTwitter等のSNSやネットなどのまとめ記事などで取り上げられる程度には注目を浴びました。
つまり、あとがきまで読んだ読者よりも圧倒的に多くのラノベ読者やその他出版に関わる界隈等の注目の方が多いはずです。
(そもそも読んでくれてる原作読者の為だけに発信する労力を割く規模なら打ち切りという事態にはならないはずです)
つまり、前述の1.であると考えるのは少し難しいかと思います。
以上を踏まえると、今回の公式ブログの発表は
2.読者を含めた今回の打ち切り騒動に注目している人間に対してのアピール
という意図を含んだ趣旨の回答である、が私の結論です。
そもそも、この騒動の流れを簡単にまとめると
1.5月30日発売「この恋と、その未来。 -二年目 秋冬-」において続きを出すことが難しいという森橋先生のあとがき
つまるところ打ち切りという結末を迎える。
2.発売日直後にSNSやネット上において今回の打ち切り騒動が注視される
3.原作者がその騒動の大きさに対して、事の一部顛末を発言する。
4.その発言も含めて、一つの騒動して注目を浴びる。
というのが大まかな騒動の流れです。
売れないから打ち切られたと言えばそれだけのことですが、
「面白い作品がこのような結末を迎える」
「読者から高い評価を受けていても売り上げに見合わなければ打ち切られる」
という声も打ち切り直後は見受けられました。
以上の出版社の予期せぬ騒動を収束させるという意図も含めての、最終巻発売決定というのは一つの可能性であると言えます。
ですが、果たして本当にそれだけで打ち切った作品を最終巻を出すとお思いでしょうか?
仮にも、出版業界最大手の角川です。
星の数あるほどの作品の一つが打ち切られた、たまたまラノベを愛読している方から評価されている作品が打ち切られた。
言ってしまえば、たかだか一作品の打ち切り。
それを撤回せざるを得ない事態だとしたら?
この問題はそんな大きな可能性を孕んでいます。
打ち切りとほぼ同時期、角川から「カクヨム」というサービスが開始された。
いわゆる「なろう」シリーズの角川Verともいえるこのサービスだが、この新サービスと同時期に打ち切り騒動が注目される。
(カクヨムについては詳しく知らないので間違っていたら申し訳ございません)
簡単に作品を投稿し、読者層をリアルタイムで判断できる「なろう」作品の人気を受けて対抗すべく始めたであろう読者参加型と言える創作活動サービスの「カクヨム」。
そんな中で、仮にもラノベ読者が優れた作品を決める「このラノ」等で注目された「この恋と、その未来。」が打ち切られた。
いわゆる「ネット投稿型」から人気作品を排出する、面白いから出版されるという形態の「なろう」シリーズと同系統の「カクヨム」を世間はどう判断するでしょうか?
「売上が悪ければ面白くても打ち切る」
「最終巻まであと1冊という状況でも問答無用で打ち切る」
「たとえ話題になったとしても、売り上げの方が重要視される」
果たして著者が新作などを投稿しようとするでしょうか?
果たして読者が新作などを購読しようとするでしょうか?
以上のことも踏まえると、先述の
「ファミ通文庫からしっかりお届けします」
という言葉の裏でひょっとしたら、森橋先生へ別の出版社から引き抜きの話が持ち込まれたのかもしれません。(正確には角川に交渉がいっていると思いますが)
騒動をビジネスチャンスにするのはよくあることですし、今回で言えば読者にある程度の人気がありネットなどでも注目された作品を上手くセールスすれば出版ブランドの宣伝にもなると言えます。
角川からすれば、
「自社作品コンテンツの流出による売り上げの減少」
に加えて
「人気作品でも売上重視である」
さらに
「長年描き続けた著者への非常な仕打ちを行う」
最後に
「読者の評価<売り上げ」
という企業イメージを打ち切ったままでは持たれてしまう。
それを打開するために、最終巻刊行を断行した。
それが今回の騒動の収束となると判断したから。
というのが私の出した最終的な結論です。
果たして今回の最終巻発売はどうだったのでしょうか?
読者の声が奇跡を起こしたと言えるのでしょうか?
こればかりは我々読者には知る術はありません。
最後に。
私が何故、この作品の最終巻発売を素直に喜べないのかを述べます。
私にとってこの作品は、私にとっての全てです。
尊敬する安芸くんの言葉を借りるなら
「俺にとって東雲侑子は全てなんだよ!」
狭い作品しか読まない私にとって、今作は円満な完結を迎えて欲しかった。
欲を言うなら、何事もなく11月に最終巻が出て終わりを見たかったというのが本音です。
好きな作品の非情な死である「打ち切り」という形が今後、「この恋と、その未来。」という作品を語る上でなにかしら取りざたされるのは正直に申し上げて辛いです。
それでも、今はファミ通文庫様より刊行されることに対して嬉しく思うということは事実です。
ただ素直に喜べない。
それは打ち切りという顛末を一度迎えてしまったから。
願わくば今回の騒動のような顛末を繰り返さないことを願って・・・
東雲信者