何故「この恋と、その未来。」は打ち切られてしまったのか? (出版社サイドの落ち度について)
何故「この恋と、その未来。」は打ち切られてしまったのか?
今回は「出版社サイド」という観点から、信者である私がこれまで出版社がどのようにアプローチをし経営戦略を進めていったのかを記録するものです。
前の記事でも申し上げましたが、「出版社」や「作者」を悪戯に非難したり、乏しめるつまりもございません。
加えて、彼らを必要以上に擁護するのもこの場では極力差し控えようと考えております。
そういいつつも前回の記事で森橋先生に肩入れしすぎたのは否定できませんが・・・
本記事の趣旨は、
「何故打ち切られたのか?」
という明確な結果に至ってしまった要因を、様々な観点から検証してみるという趣旨のもと記載しております。
繰り返すようで申し訳ありませんが、信者である私は良い部分も悪い部分も包み隠さず受け入れなければなりません。
好きな作品であるからこそ、世界で最も愛していると自称しているからこそこの事実を直視したいと考えております。
長くはなりましたが、これより本題である
何故「この恋と、その未来。」は打ち切られてしまったのか? (出版社サイドの落ち度について)
について語ろうと思います。
前記事
さて、早速ですが皆様は「この恋と、その未来。」という作品がどのような経営戦略をとっていたかご存知でしょうか?
経営戦略と言ってパッと思いつかない人も多いでしょう。
単純に言ってしまえば、「どうやったら作品を知ってもらえるか?」という事であります。
多くの出版物は、
「○○賞受賞!!!(各レーベル毎の新人作品など)」
「○○先生絶賛!!!(人気ラノベ作家様等の評論など)」
「○○先生最新作!!!(シリーズ完結後の有名作家様による新作など)」
と言う風に告知されます。
(今回は完全なる新規作品を出版したと仮定します)
最近では、ネットでの話題によって出版刊行される「なろう」シリーズや、メディア展開や人気絵師を採用した物など時代による変化も多少はありますが
本質的な「何かしらの評価対象を用いて売り込む」というのは、新規作品のある種テンプレート的な経営戦略であると言えます。
前述の例でいうなら、
各社毎に行われる賞を受賞した作品を持ち上げる
「受賞型新作出版」
ー前年までの受賞作をラインナップすることで過去受賞作の読者や、ラノベ読者等の読者層を獲得する経営戦略ー
各社毎の人気作家評価によって作品を持ち上げる
「評価型新作出版」
ー既存人気作品を提供している人気作家によるお墨付きを貰うことで、その読者ならびにラノベ読者に興味を持たせ読者層を獲得する経営戦略ー
作者の固定客を新作提供によって作品を持ち上げる
「固定型新作出版」
ー上述した既存作品等を手掛けた作家が作り出した新規作品を、その読者ならびにラノベ読者に興味を持たせ読者層を獲得する経営戦略ー
の3つに分類化できるのではないと思います。
(上述の名前は私が適当に付けたものです、細分化するとこれまた長くなるので今回は割愛します)
前2つは完全なる新規作品(いわゆるデビュー作品と呼ばれるもの)であり、それらのブランドネームを持たない作家を売り込むために、各出版社が手を変え品を変え話題を生み出そうとしております。
当然、それら作品を売り込むためには話題を作らなければなりません。
産まれた時点で、既に「固定読者を何万人も所有する作家」と「産まれ立ての新人作家」ではどちらが売り上げを期待できるか?
言うまでもありませんね?
そう、後者です。
出版業界もボランティアではありません、売り上げを出せない作品に未来はありません。
「この恋と、その未来。」という未来の名を冠する作品が打ち切られてしまったのは皮肉な話ではありますが・・・・
話が逸れましたが、要するに私が言いたいのは「作品を売り込む努力」が必要不可欠である。
当たり前のように感じられますが、我々が知らないところで出版社様は努力をしておるのです。
本当に前置きが長くなりましたが、ここからが本編です。
まず初めに
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この記事では、前作「東雲侑子」シリーズと今作「この恋と、その未来。」が歩んできた歴史を記載させて頂きました。
発売日関連だけではありますが、出版社や作者である森橋ビンゴ先生・Nardack先生ならびに関係者の皆様の意図の一端を垣間見れるのではないのかと考えております。
本記事では、前記事では触れなかった「この恋」シリーズの歩んだ歴史をより明確に記述したいと思います。
2012年5月30日 「東雲侑子は全ての小説をあいしつづける」発売開始
この日、前作「東雲侑子」シリーズ完結。
同年11月に、「このライトノベルがすごい!2013年度」の8位に入賞する。
完結作品にしては極めて異例であり、同年のベスト10ランクイン作品としては同年に完結した「サクラダリセット」と並んで受賞作品内でアニメ化していない作品であるのだ。
(アニメ化に際して細かいことを言えば、受賞当時はアニメ化していない作品なども入賞ではあるが今回は割愛する)
これがどれだけすごいことなのかは、各読者毎には異なりますが
「全くの無名作品」:同年入賞作品と比較しても話題性は非常に低い。
「短期間完結作品」:上述作品と比較しても巻数は非常に少ない全3巻。
という2つの観点だけでも、「東雲侑子」シリーズが入賞したことがどれだけの偉業を成し遂げたのか言うまでもありません・・・
さて、そうした偉業を成し遂げてから1年半後・・・
ついに、森橋ビンゴ先生が始動します。
そう・・・
2014年6月30日 「この恋と、その未来。 -一年目 春-」発売開始
「この恋」シリーズ連載開始である。
前作の「東雲侑子」シリーズとは違い、本作「この恋」シリーズはある巻数以上の連載を想定した出版作品であります。
具体的に、どれだけ出版社が力を入れ込んでいたのかと言うと、
1.連載開始時に森橋先生とNardack先生とのインタビューを含めた公式特集HP
2.大手書店での多数店舗との販促展開
3.作品舞台である広島とのタイアップ
とファミ通文庫作品にしては比較的大規模の経営戦略をとっております。
皆様はご存じだったでしょうか?
1に関しては、作品概要と登場人物の紹介、それに加えて各先生方への今作への意気込みなどのインタビュー記事。
2に関しては、「アニメイト」様・「ゲーマーズ」様・「WonderGoo」様等の全国展開しているアニメショップでの店舗特典の配布。
3に関しては、広島大手書店での限定店舗特典と広島駅とのタイアップ。
今作に掛ける「ファミ通文庫」様の意気込みが感じ取れるかと思います。
現実問題として、「この恋」初巻の売り上げは出版社サイドとしては予想以上に悪かったそうではありますが、
同年の「このライトノベルがすごい!2015年度」では1巻のみで9位に入賞する等、話題を提供する等出版社が悲観する程、致命的な結果ではなかったというのが私個人の見解であります。
「このラノ2015年度」の話を先に出してしまいましたが、その前に
2014年11月29日 「この恋と、その未来。 -一年目 夏秋-」発売開始
を迎えている。
同発売時期に、ファミ通文庫は2つの大きな経営戦略を行っておりました。
1.全国書店における既刊作品購入者への販促物配布
2.それに伴う公式HPでのインタビューならびにサインプレゼント
であります。
同ファミ通文庫作家である「石川博品」先生とのタイアップを行う形で、各先生方へのインタビュー等、新規読者の獲得を目的とした経営戦略が行われておりました。
加えて新刊発売直後には、ファミ通文庫公式Twitterアカウントによる感想Tweet等のRT等、公式が必死に宣伝活動を行っておりました。
転機となったのは続巻の
2015年5月30日 「この恋と、その未来。 -一年目 冬-」発売開始
この巻で販促物が「アニメイト」様・「ゲーマーズ」様の2店舗だけになってしまいました。
「一年目 冬」の評価に関しては過去記事にも書きましたが、この巻の発売時期は個人的には大きな分岐点ではないのかと個人的に推察しております。
私個人では良い風に繋がったと認識しておりました。
しかし、出版社サイドにとってこれを機会に裏で打ち切りを進めていたのではないかと考察しております。
2015年10月30日 「この恋と、その未来。 -二年目 春夏-」発売開始
同年秋に、続巻が発売しているがその直後に発表された「このラノ2016年度」での評価もベスト10位以内を逃すなど雲行きは怪しくなっていきました。
しかし、ベスト20には入賞していたこと、ファミ通文庫というレーベルでは最も順位が高いという理由から完結までは滞りないであろうと高を括っておりました。
あとがきでも、あと2巻ほどで完結すると明言しておりましたので・・・
そして、訪れる運命の日・・・
2016年5月30日 「この恋と、その未来。 -二年目 秋冬-」発売開始
「この恋」シリーズ打ち切り決定(森橋先生発言ならびにあとがきより)
関連発言
ただ「この恋と、その未来。」に関しては「最後のライトノベル」として書き出しただけに、中途半端にしたくなかったんで、最終巻にあたるテキストはいずれ何らかの形で発表はします。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月29日
あれこれ書いた上で、この期に及んでまたダラダラと書きますけども。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
今回の打ち切りを受けて「ファミ通文庫がクソ」とか「ファミ通文庫無能」みたいな意見は本当に、やめて頂きたいと思うわけです。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
ライトノベルは一般的に、発売後2週間前後の初動で打ち切りか否かが決まる、などと言われますが、「この恋~」に関しては初動だけで言えば、そりゃまあ貴方、酷いもんです。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
しかし、ボクの本はライトノベル業界には珍しく、長い目で見ても多少上向きになる傾向があるので、かなり大目に見て貰っていた節があります。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
そんなファミ通文庫さんだから、ボクはここまでライトノベルを書く事を続ける事ができた、と言っても、過言ではないのです。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
そもそも「この恋~」の企画が通った事も、そうです。ボク自身、厳しい企画だとは分かっていましたし、編集部もそれは分かっていたはずなので。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
それでもボクの我が儘を通して下さったのはファミ通文庫編集部で、ボクはずっと、それこそデビュー以来、彼らに感謝をし続けています。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
だから、どうか、編集部の事を悪く言わないで頂きたい。彼らは「売れ線ライトノベル」を書けない歪な作家の我が儘を、寛大に受け入れて下さったのだから。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
それともうひとつ、本来5巻で終わらせろと命じられた物語を、結局6巻構成のままの5巻として書き上げてしまった事について、これは単純にボク個人の我が儘なので、読者の皆様には謝罪する他ありません。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
ただ、ひとつだけ言い訳をさせて頂くなら、どうしても5巻で終わらせる事ができなかったのは、6巻にあたる部分が「再会」のエピソードだったからです。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
「再会」には間が必要です。それは物語が公開されるまでの時間であり、また単純なページ数という意味においてでもあります。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
別れのエピソードの後、同じ本の中の、たかだか数十ページ後に再会するような事にだけは、どうしてもさせたくなかった。つまるところ、それが理由です。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
という事なんで、とりあえず、ファミ通文庫さんを悪く言うのはやめてネ。あと、駄目ライトノベル作家で、ほんま、すんませんな。
— 森橋ビンゴ (@Morihashi) 2016年5月30日
以上が、「この恋」シリーズが辿った打ち切りという顛末の全容でございます。
では、上記の経営戦略を踏まえたうえで私が考える敗因を2つだけ述べさせていただきたいと思います。
1.一般読者ならびにラノベ読者への周知不足
売り上げが悪い作品を推すことは確かにリスクの高い行為ではあります。
では、それを考慮してでも何故私がこれを敗因と断言するのか?
それはこの一言に集約されます。
「皆さんは上記経営戦略の一端を少しでも周知していたでしょうか?」
つまるところ
「「この恋と、その未来。」という作品をファミ通文庫が売り込んでいたという事実を知っていましたか?」
ということです。
去年のラグビーワールドカップで日本代表が南アフリカを破り、「五郎丸歩」選手が世に広く認知されたように
「知ってもらう」
という行為は、経営戦略にとって非常に重要な事柄であります。
「それまで、ラグビーにおいて日本が24年間勝てなかった事実をご存知ですか?」
「日本代表が何故偉業を成し遂げたのかご存知でしたか?」
知ることの重要性を改めて語る必要は無いと思います。
それだけ「知る」という行為、すなわち「認知」してもらうという行為は必要不可欠なのです。
「売れるべき作品を売れるようにする」
出版社の責務であると私は考えております。
そうした理由から、1つ目の敗因と挙げさせていただきました。
2.販売店舗との情報伝達の行き違い
これも1つ目の敗因に起因する要因ですが、出版社は販売店と協力してキャンペーン展開や販促物などの配布を行っております。
特に、「一年目 夏秋」発売時に行われた、「東雲侑子」シリーズとの連動SSペーパーの配布キャンペーンの際に販売店舗が販促概要を周知していなかった事実確認できました。
(後日、別途記事にて詳細は延べますが・・・)
キャンペーンが周知されることも重要ですが、それを展開する販売店様との密なやり取りが必要不可欠なのは言うまでもありません。
1つ目の読者への周知に加え、販売店への周知の欠如。
店員も知らないことが、読者の皆様に伝わるとお思いですか?
「売る人間が作品の魅力を理解していないことがどれだけ愚かなことか」
言ってしまえば
「販売店様が販売している商品が何かを知らない状況にある」
ということと同義しているのです。
「是非とも当店で買って下さい!何を売っているかは私も分かりませんが!」
そんなお店で何か購入したいと思いますか?
販売店側との密なやり取りはそれだけ必要不可欠なのです。
以上2つを大きく怠ったが故に、今回のような打ち切りになってしまった。
私はそう考えております。
最後にひとつだけ言わせて頂きます。
出版社サイドの落ち度について指摘しましたが、出版社について大きく非難するつもりはありません。
この場ではそのつもりは毛頭ございませんし、別途記事で爆発させようと思います。
昨今の、紙媒体の売り上げ減と言う状況でありながら、上述の経営戦略をとったことがどれだけ凄いことであるか・・・
アニメ化もコミカライズ化も、他作品の王道作品に比べ見込みが少ない作品であります。(もちろん今作が素晴らしいというのは事実ですが今回は割愛します)
その「この恋と、その未来。」と言う作品がこれだけ力を入れられていた。
それは、変わりようがない事実であります。
その反対に、それだけの活動を皆様読者に周知してもらえなかったということもこれまた変わりようのない事実であります。
それを踏まえたうえで、アンケートの記入や感想の共有など我々読者が出来ることを行って頂ければと思います。
長くなりましたが、以上で締めたいと思います。
駄文失礼致しました。